イタリア展にて

先月30日から新宿伊勢丹でイタリア展が始まりました。

平日の昼間にもかかわらず、催事場はすごい人!

ワインの試飲販売のコーナーも数えきれないくらいのボトルが抜栓され、狭い通路は人でごったがえし、すれ違うのもやっとなほどです。

 

こういった催事での試飲のとき。

昔はとにかく全部試飲してやるっ、

とばかりに気合入れて端から試飲してまわったものです。

これだけの数のワインを無料で試飲出来る機会はそうはなく、

しかも若かりし頃(今より)ですから、

懐は寂しくも(これは今も余り変わらず)勉強意欲は満々なわけです。

 

最近はその時々で自分なりのテーマをもって廻ることが多くなりましたが。(体力意力の低下か。。。)

 

さて、ワイン売り場はいくつかのブースに分かれていますが、

大半はインポーターさんによって分けられているようでした。

まずはぐるっと一周して全体をつかんだあと、

さて、本日はどうやって試飲していこうかな、と思案。

各ブースで良さそうなスタッフさん(ワインに熱意がありそう、とか、親切そうとか)を見つけて「お薦め」もしくは「珍しいもの」を聞いていくことにしました。

 

あるブースのワインを眺めていると、

後ろから「それ、ヴェルメンティーノ(ぶどう品種)ですよ」

とのイタリア語。

品種が判るから言っていることが判りますが、

イタリア語は全く判らない私。

英語に切り替えて頂いて、そのイタリア人の彼(インポーターさんでした)にお薦めを聞いてみました。

 

「どんなワインがいいですか?」

「アルコールが高くなくて、パワフル過ぎないワインがいいです。」

 

いくつかのお薦めの白ワインとロゼワインを試飲しながら

その彼曰く

「日本料理は繊細だから、こういうタイプのワインが日本の食事には合うとおもうのですが、残念なことにこういうタイプのワインはあまり売れないのです。多くの日本の人はもっと強い味わいのワインを欲しがります。そしてこういった強くはないけどバランスのとれたエレガントなワインは値段が安くもないので、皆さん高いと感じてしまうようです。」

とは言っても二千円〜三千円くらいのワインですよ。

 

確かにいかにも重厚そうなキャンティ(重厚なキャンティ!)やブルネッロなどがずらっと並ぶブースを見ていると、やはりこういった力強いワインが売りやすいのだろうなぁ、と思ったりします。

そしてそれらはもっと高価ですが。

「どうだ!美味しいだろう!」と迫ってくるようなワインに、

魅力を感じる方が多いのでしょう。

 

ともあれまずは美味しいラグレイン(品種)のロゼを見つけたので、

それをマーク。

 

そして次は赤ワイン、と彼が薦めてくれたのが写真のワイン。

「このワインは一番お勧めです。僕の好きなワインです。リグーリアのワインでぶどう品種を三種類使っています。余計な強さはなく、エレガントで自然な味わいのワインです。でも、ダメ。日本ではあまり売れないです。

(悲しそうな表情)日本の人はもっと強いワインを欲しがります・・・日本の食事はパワフルなじゃないのに・・・まあ、とにかく飲んでみてください。あ、ぶどう品種をひとつ当てて下さい(何っ!?)ひとつはリグーリアの土着品種です。だからこれはいいです。もうひとつも少しなので(使っている割合が)いいです。でもひとつは、あなたならきっと判ります。」

 

そんな。何を根拠に。。。

 

とはいえ、ならば真剣に試飲です。

 

淡く赤みがかった色合い(小さなプラスチックカップで見る難しさ)

穏やかですが小粒のベリーを思わせる可愛らしい香り。

軽やかですが、丁寧で、でもちゃんと肩の力が抜けた味わいは、

お家ご飯にぴったりでしょう。

 

まず、リグーリアの土着品種の黒ぶどう。

そもそもリグーリアのワインはヴェルメンティーノを主体に造られる白ワインはメジャーですが、黒ぶどうとなると。。。

 

そして彼が私に聞くということは、わりとメジャーな品種ということ。

隣接する州に目を向けてみると。

一番接している北のピエモンテ州ではネッビオーロという有名な品種がありますが、これはもっと重厚な味わいにあるはず。

バルベラやドルチェットは軽やかさの点で近い気がしますが、

それならもっと酸味が目立つような。

そしてこのワインの僅かにスパイシーで可愛らしいベリーのニュアンスは。。。

 

「あ!!もしかしてプロヴァンス(リグーリア州の隣はフランスのプロヴァンス地方です)にある品種では!?」

と聞く私に

「えっ!!いや、えーと・・・」(動揺。隠し事が出来ないタイプ?)

「グルナッシュ!!」

「えっ、うぅ、えーと、そう、グルナッシュです(当てられてちょっと残念そう?)いやっ!すごいです!!普通判らないです!!」

とどんどん盛り上がったと思ったら、

少し離れたところにいたイタリア人に私を指さして大声で何やら叫び

(どうやら当たったことを伝えたらしい)

また私に向き直り、

「ああ、なんてことだろう、本当にすごい!」

(大げさだなぁ、イタリア人)

 

「そうです。グルナッシュ、バルベラ、そしてリグーリアの品種であるロッセ―ゼです。とてもバランスのとれた味わいです。でも日本ではこの3つの品種を使っている、というだけで、いらない(というゼスチャーをしながら)言われます。(また悲しい顔)」

 

確かによく判ります。

やはり売れる「イタリアワイン」は

まず、キャンティとかブルネッロ・ディ・モンタルチーノ、そしてバローロといった有名なワイン(大抵の場合単一品種で、かつ濃厚なタイプ)

もしくは白ワインなら北イタリアのもの

(それぞれのぶどう品種ごとに造られたもの)

そしてもしくは南イタリアの判りやすい華やかな果実味を持つ、お手頃価格のワイン、でしょうか(この場合の魅力は価格)

 

未だに品種が一種類(単一品種のワイン)の方が良い、

という価値観があるのでしょう。

 

ちなみに、グルナッシュはフランスだけではなく、

イタリア、スペインでも栽培されている品種です。

(カンノナウ、ガルナッチャ)

 

わかるわかる、とお兄さんと盛り上がりながら、

大盛況でごったがえしている売り場を複雑な思いで眺めたのでした。

 

パワフルで力強いワインばかりではつまらない、

と考える飲み慣れたなあなた。

それを基準に試飲してみるのも、効率的に廻れて良いかもしれません。

力強さや過剰なアピールをしない、

日常に寄り添う丁寧に造られた味わいのワインは、

そう多くありませんから。

 

ちなみにラベルの絵は

「造り手が書いた自分の家族の絵なんだよ!」

だそうです。

BRUNAの「Rosso "Bansìgu" Colline Savonesi」

もしご興味湧きましたら試されてみてくださいね。