Union des Grand Crus Bordeaux

毎年恒例、ボルドーでこの時期開催される試飲会です。今回のメインヴィンテージは2013年。

2013年は春に雨が多く冷涼で、開花はボルドーで通常より2週間程度遅れました。夏は一変して暑く干ばつが続き、しかし9月に入ると一気に寒くなり雨が続いた年です。私も当時パリにいましたが、皆既にコートを着ていたぐらい寒かったのです。そして雨がずっと続きました。既に日本でも2013年のプリムール試飲会が行われており、今回その時の味の記憶を照らし合わせながら試飲してみました。あれから約2年経ちワインの味わいがまとまってきていますが、全体として当時受けた印象とだいたい同じでした。グラーヴおよびペサック・レオニャンの白ワインは酸が骨格を造り、果実味はややタイトな上品なスタイル。赤ワインは総体的にふわっとした果実味の質感に硬い酸を持ちますが、エリアによって果実味に凝縮感があり、それにより味わいの密度やバランスが異なるようです。赤ワインのお薦めエリアは右岸ならサン・テミリオンで台地の高台に畑をもつシャトー。左岸ではエリアとしてはマルゴーが全体としてバランスがとれているようでした。

メルローは主に粘土質の土壌で栽培されますし、収穫も早くがちょうど冷涼かつ雨の影響を受けているので、ともすると凝縮感に欠け酸が目立ってしまった傾向にあります。この年は水はけの良い土壌であること、そして収穫期になんとか天候が持ち直したカベルネ系がワインの凝縮感を左右しているようです。

ちなみに今回比較させるヴィンテージとして多くのシャトーが用意していたのは2008が一番多く、あと2011年もよく見かけました。確かにその2つのヴィンテージを合わせたような年とも言えます。対比型としては2009年や2006年など暑いヴィンテージを用意されているところもちらほらありました。

 

さて、写真の右側は有名なシャトー・パヴィ・マカン、そしてその左側はシャトー・ラルシ・デュカス、シャトー・ベルリケ、シャトー・ラ・ガフリエール。会場左手から時計回りにグラーヴ地区、ペサック・レオニャン地区、そして右岸、左岸、最後にソーテルヌ、バルザックとなっており、多くの参加者は左手から順番に時計回りに試飲をされています。試飲している様子を見ていると、まずは有名&高級ワインを!と狙いをつけて試飲する人が多いのはどの国も同じようで、このサン・テミリオンのブースだと、シャトー・フィジャックとシャトー・パヴィ・マカンに人気が集中しており、多くの方がその間のシャトーを飛ばしていたりするわけです。まあ確かに「端から全部試飲するぜっ!」という強者は業界関係者か余程のワイン好きかでしょう。だって全部で130を超えるシャトーが集まっているわけですし。でもそんなふうにホッピングしながらシャトー・パヴィ・マカン目指した参加者に、シャトー・パヴィ・マカンのムッシュは「(同じテーブルの)他のドメーヌはもう試飲した?」(皆大抵「Non」と首をふる)「だったらぜひ順番に試飲して、どれも美味しいから、それから私のところも試飲してくれないかな。」皆さん思わず苦笑してテーブルの端から順番に試飲をする、という光景が繰り広げられておりました。確かにその並び他シャトーの皆さん暇そうで(笑)うん、このムッシュいい人なのでしょうね、きっと。

ちなみにそのシャトー・パヴィ・マカンのお隣さんにあったシャトー・ラルシ・デュカス、個人的には良かった1本でした。シャトー・パヴィ・マカンは確かに洗練された高級感あるスタイルなのですが、なんというか、私には格好良すぎる、というか。格好良すぎて近づきがたいというか、格好良いけどそそられない、というか。う〜ん、解ります?その感覚。もちろんスマートな格好良さが好きな方にはばっちりなのですが。それに比べてシャトー・ラルシ・デュカス2013は骨太でいかついけど人間味ある味わいで好感がもてました。

そう、ボルドーの、特にこういったユニオン・デ・グラン・クリュ・ボルドーに加盟しているようなシャトーの味わいは、全体として非常に整った、そつのない味わいで、それが高級感だったり洗練された味わいをもたらしており、ある意味それは成功なのでしょうけど、逆に言えば人間味をあまり感じないように思えたりするのは私だけでしょうか?もちろん所有する畑も広く、(ブルゴーニュやアルザス、ロワールなど他の地方の個人生産者の所有面積と比較して)規模的にも多くのスタッフがいたりして(大抵の場合、広報スタッフまでいるような)チームによるワイン造りですから、そういった人間味みたいな個性は薄まっていくように思えます。これはシャンパーニュの大手メゾンにも同じことが言えるかもしれませんね。

そういった意味でシャトー・ラルシ・デュカスは好印象だったわけです。

 

もう1本、個人的に気に入っているのはオー・メドックのシャトー・ド・ラマルク。毎年「美味しいな」と思うので、これはもう単に私の好みなのかもしれません。2013年も軽やかですが水っぽくなく、重厚さや複雑味、というよりは、心地よい果実味を楽しむワインです。

いつか訪れてみたいなあ、と思っています。