ボルドープリムール2015

ボルドー滞在のお話もまだあって、今月1日にオープンしたワイン博物館シテ・デュ・ヴァンについてアップしたいのですが、その前に本日東京で開催された毎年恒例のボルドープリムールについてお先に。

既に2009、2010に並ぶグレイトヴィンテージとの呼び声が高い2015年。

そのせいか会場は昨年や一昨年を超える大賑わいでした。この試飲会は業界関係者だけではなく一般の方も参加出来るのですが、会場のあちこちで「2015年はグレイトヴィンテージらしいよ」「2015年は良い年なんでしょ?だから今年は来ちゃった」なんていう声が上がっていました。

それにしても一般の方を含めてこれだけ年による出来が騒がれる地方は、

これだけその年の天候が話題になる地方は、ボルドーをおいてなかなかありませんよね。あとボージョレ地方でしょうか。

その次はブルゴーニュでしょうが、でもブルゴーニュの天候に関してはかなりのワイン好きの方か、仕事に関係する方に限られる気がします。

 

会場で気になったことがいくつか。

まず何故か並べている試飲ワインの地域が時折バラバラ。おおまかには分かれているのですが、きちんとは地域ごとにまとまっていないのです。

オー・メドックのワインがあちこちに散見されたりとか。

系統立てて地域ごとの出来を見たい人にはちょっとやりにくい配置です。

あと、いつもよりも格付けが高いワイン、いわゆる高級ワインが少なかったような?2015年は良い年だとの触れ込みに、試飲用のワインも経済的にも力を持っている国に廻ってしまったのでしょうか。

それと、私の見落としでなければポムロールのワインが1本もない!

 

配布された試飲ワインの資料にも掲載がないので、おそらく無かったのだと思います。飲食店や販売店、マスコミ関係者も呼んでいる試飲会にしてはちょっと寂しい気がしたのは私だけでしょうか。

 

さて肝心の出来栄えですが、ボルドーの造り手や日本の酒販業界の多くは、2009、2010年に匹敵するグレイトヴィンテージ!と言っていますが、私はそう言い切るのは眉唾だと思っています。

現段階で、地域や造り手によって随分と状態にばらつきを感じたからです。

 

白は果実味がのり酸が穏やか。ソーヴィニヨン・ブランの比率が高いところは、はっきりとしたパッションフルーツの香りが強く出ています。

そのスタイルが好きな方には良いでしょう。香りといい、穏やかな酸味といい、アジア系のエスニック料理とも相性が良さそうです。

 

赤は、サン・テミリオンが全体的に果実味が豊かで、凝縮感もあり、かつ酸もこの年にしては比較的保持していたように感じます。個人的に試飲したなかではエレガントさではシャトー・カノン、充実した果実味ではシャトー・ラ・ドミニクなどが良かったように感じました。

なのでなおのことポムロールが試飲できないのが残念。

あと良いと感じたのはマルゴーでしょうか。暑い年らしさが良い意味で感じられる味わいです。この日のなかではシャトー・ローザン・セグラが力強さという点でひとつ頭出ていたように感じます。

ペサック・レオニャンもやや果実味に寄りながらも早いうちから楽しめてしまう親しみやすい味わいだと思います。

ポイヤック、サン・テステフ、サン・ジュリアンは地域として、というよりも造り手によるところが大きいような気がしました。ポイヤックで凝縮感やバランスの点においてはシャトー・クレール・ミロンとシャトー・ダルマイヤック。いずれも出展されたポイヤックの中ではメルロの比率がやや高めです。

 

本日試飲出来たワインはボルドー全体のほんの僅かに過ぎず、これだけではまだまだ判らないことだらけではありますが、逆に言えば、これだけの中でも違いがあるというのは、「良いヴィンテージ!」と騒がれている年だからこそ気になるところです。

プリムールは先物買いをするからこそ、市場に出た時より安く買えるのが魅力ではあります。しかし、もし価格と味わいを真剣に考えるのであれば、グレイトヴィンテージという言葉に踊らされ、あまり深く考えずにブランドだけであれこれと大量に購入するのは危険な年かもしれません。

そういった意味でも、このように一部とは言え購入前に試飲出来る機会は素晴らしいですね。