ワイナリーに戻り試飲です。
色々と発見があったのですが、まず、私が昔から疑問だったことを。
リョウやサラといった品種の違いがあり、さらに年によって「リョウ」「リョウ・クラッシック」「リョウ・セレクション」とあるのですが、
このそれぞれの違いについて質問をしてみました。
まず基本的にはその年のぶどうの出来栄えに寄るそうです。
なので、セレクションは特に良い年のみ、ということになります。
あとは樹齢の違い。「リョウ」にはなかでも樹齢の若い区画が用いられるそう。クラッシックとセレクションでは、出来栄えによっては新樽率が変わる、ということでした。
なるほど。
そして意外な発見としては、メルロから造られるデニーや北の夢(山葡萄のサンカクヅルとピノ・ノワールの交配種)でした。
都内などではリョウや他白ワインのサラやカノンを見かけることはあっても、これらのワインは初めて拝見しました。以前はHPにも載っていませんでしたし。(今HPを拝見するとちゃんと載っていますよ。)
そもそも始まりはリョウのピノ・ノワールに衝撃を受けて知ったワイナリーでしたし、メルロも造られているのは現地に来て知りました。
冷涼地のメルロといった趣で、引き締まったすっきりとした味わいです。
北村社長いわく「鮪と合わせると美味しい。」とのこと。
ぜひ試してみたいものです。(もちろん買ってまいりました)
そしてワイナリー販売のみの「無濾過」のリョウ・クラッシックとサラ・クラッシック。こちらの勢いのある瑞々しい味わいは嬉しい驚きでした。
やはりどうしても無濾過だと温度変化に弱いため(吹いてしまう恐れがあるそうです)ここでしか売っていないのです、とのこと。
う〜ん、やはりここでも現地に来ないと買えないワインがあるのですね。
まだまだあります。
甘口ワインに造られるカノンですが、滅多にないことだそうですが、
なんと2015年は一部貴腐がついたそうです。
北村社長いわく、「単なるカビではなくて、ちゃんと貴腐になるには本当に自然条件が整わないと。」ということで、しかもこうなると粒ごとにチェックしての収穫になるため、その手間たるや大変です。
香りにはさほど強く貴腐の風味は出ていませんが、さらりとしながらも深みのある味わいは上品です。
しかし、おそらく一番大切な発見はこれかもしれません。
この試飲の時、北村社長は一番最初に、
「あの、これらも飲んでみませんか?」とまず出してくださったのが、
スパークリングの青森スパークリングと、うっすら淡いロゼワインのホワイトスチューベン。これらはいずれもスチューベンというぶどう品種で造られています。このスチューベンは青森で一番生産量の多いぶどう品種なのです。そして日本国内においても生産量は一位です。主に津軽地方で栽培されており、蔗糖が多く含まれる品種で、果汁が冷蔵保管しやすいのが特徴だそう。
実はこちらのスチューベンのワインを頂くのは初めてでしたし、失礼ながら正直あまり期待はなかったのです。私の目はリョウやサラやカノンと言ったワインにばかり向いていました。でも、それでは青森におけるワイン造りを知る上で大事なことを知らずにいるところでした。
そしていずれも美味しかったのです。
予期していたラブルスカ独特の香りは出すぎること無く、
すっきりとした味わいは北の産地らしく、
スパークリングにおいては僅かに感じる甘みが良いバランスとなり、
これはもう食前酒やバーベキューなどにはもってこいだと思います。
ボトルが500mlとやや小さいとはいえ、千円を切るお値段でこの味わいなら十分満足ではないでしょうか。
ホワイトスチューベンはスチューベンのブラッシュワイン(黒ぶどうをプレスして、ジュースを発酵させる。一般的な白ワイン的醸造方法)です。
香りに華やかさはありませんが、味わいは引き締まった酸と、しっかりとしたボディがあります。北村社長いわく、「ブラインドで飲んだらプロヴァンスのロゼワイン的だと思うのです。」確かに、コトー・デクス・アン・プロヴァンス的かもしれません。やはり、こうやってその地域の農業を考えたワイン造りを行うということは大切なことです。単に美味しいワインを造り上げれば良いわけではなく、その土地で一緒に造りだしてく、そして繋いでいくことの重要性を改めて感じたのでした。
ちょうど伺った頃、こちらのサンマモルワイナリーを経営する有限会社エムケイヴィンヤードは弘前にて新たなワイナリーが立ち上げたばかりでした。
もともとホテルだったところを改装してワイナリーにされたそうで、そちらではスチューベンをメインとしたワイン造りを行う予定だそうです。
スチューベンの栽培が津軽地方なのであれば、ぶどうをこちらまで運ばずに醸造出来るのですから、今後ますます品質的にも良くなっていくのではないでしょうか。
ゴルフ場やレストランなども併設の、一般の方々が行楽に訪れやすいワイナリーとなるとか。青森の大切な農産物であるスチューベンがワインとして多くの方に親しまれるフラッグシップとなるのでしょう。
ワイン造りというと、ワイン用品種による、ヨーロッパ的なワイン造りばかりに目が向かれがちですが、それだけではない、日本ならではの風土や地域の特徴を活かした産業としても発展してくのであれば、素晴らしいことですし、ワインを楽しむ方々の裾野を広げることにもなるのかもしれません。
今回はご多忙な折にも関わらず多くの貴重なお話を聞かせてくださった北村社長のおかげで、非常に実りあるワイナリー訪問となったのでした。
改めて感謝です。
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